源氏物語 松風

《要旨》光源氏が明石の君のもとでを弾いた夜を思い出し、明石の君がそのを差し出すと、光源氏は感情を抑えきれずに琴を弾きます。の音色は当時と変わらず、明石の君への変わらぬ思いを伝えます。明石の君は光源氏との約束を信じ、涙を流しながら詠み交わします。光源氏は明石の君と若君を見捨てがたく、二条院に引き取ることを考えますが明石の君の悲しみを思い、言い出せずに涙ぐみます。若君(娘=明石の姫君)は少し人見知りしますが、次第に打ち解け、光源氏はその様子を愛おしく感じます。翌日、光源氏は京へ帰る準備をしながら、秘密の場所が騒がしくなったことを気にします。

【小学生でもわかる】紫式部による日本最古の長編小説『源氏物語』のあらすじを現代語訳でわかりやすく解説!大河ドラマ『光る君へ』で

本  文

問  題

口 語 訳

 (明石の君のところで琴を弾き、その琴を残して別れた)かつての夜のことを、(光源氏は)お思い出しなさっていらっしゃる(その)時を見逃さず、(明石の君は)あの琴のお琴(七弦の琴)を差し出した。どことなくしみじみとしてくるので、(光源氏は)我慢がおできになれず、掻き鳴らしなさる。(あの時の)調べももとのままで、当時に戻って、あの時のことが今のようなお感じがなさる。

<span style="text-decoration: underline;">七弦の琴</span>
七弦の琴

約束したとおりに今も変わらぬ琴の調べで、あなたを思い続けた私の心のほどは分かったでしょうか。

女は

心変わりはせぬとお約束なさったことを力として、松風の音に音を添えて泣いていました。

と詠み交わし申し上げたのも、(光源氏と)不釣り合いでないのは、身に余る幸せのようである。すっかりと美しくなった(明石の君の)器量、雰囲気、とても見捨てがたく、若君のことも、言うまでもなく、いつまでもじっと見守らずにはいらっしゃれない。「どうしたらよいだろう。世間から隠れてお育ちになることが、気の毒で残念に思われるが、二条の院に引き取って、思いどおり大切に世話をするならば、後になって世間の人々から非難も受けなくてすむだろう」とお思いになるが、一方では(若君と離れる明石の君が)悲しむことも気の毒で、お口に出すこともできず、涙ぐんで御覧になる。(若君は)幼い心で、少し人見知りしていたが、だんだん打ち解けてきて、何か言ったり笑ったりして、親しみなさるのを見るにつれて、(光源氏は)ますます美しくかわいらしく感じられる。(光源氏が若君を)抱いていらっしゃる様子はいかにも立派で、将来この上ないと思われた。

 次の日は(光源氏が)京へお帰りになるので、少しゆっくりと寝過ごしなさって、そのままこの山荘からお帰りになる予定であるが、桂の院に人々が多く参集して、ここにも殿上人が大勢参上している。(光源氏は)ご装束などをお召しになって、「ほんとうにきまりが悪いことだ。このように発見されるはずのない秘密の場所なのに」と言って、騒がしさに引かれるようにしてお出になる。

探求的な考察

明石の姫君と紫の上は『源氏物語』の登場人物で、特別な関係。

明石の姫君は、光源氏と明石の君の娘です。彼女は幼少期に光源氏によって二条院に迎えられ、紫の上の養女として育てられました。紫の上は明石の姫君を実の娘のように愛情深く育て、美しく成長させました。

その後、明石の姫君は東宮(後の帝)に入内し、13歳で第一皇子を出産します。紫の上は明石の姫君の成長を見守り、彼女の人生に大きな影響を与えました。

紫の上が明石の姫君をお世話した理由はいくつか考えられます。

  1. 光源氏の意向:光源氏は、明石の姫君が将来重要な役割を果たすことを予見し、彼女を手元に引き取り、紫の上の養女として育てることを決めました。
  2. 紫の上の愛情:紫の上は、明石の姫君を実の娘のように愛情深く育てました。彼女は明石の姫君を美しく成長させるために尽力し、彼女の教育にも力を入れました。
  3. 社会的地位の向上:明石の姫君は、身分の低い母から生まれたため、紫の上のもとで高い后教育を受けることで、将来の地位を確保することができました。紫の上は光源氏の意向を尊重し、明石の姫君を愛情深く育てることで、彼女の将来を支えました。

紫の上について

紫の上は、光源氏の継母である藤壺の姪にあたります。彼女は幼い頃に光源氏に見初められ、彼の屋敷で理想の女性になるように育てられました。紫の上は、容姿だけでなく知性や性格、才芸などでも理想的な女性として描かれています。

光源氏との関係

光源氏が療養中に、10歳の紫の上と出会い、一目惚れします。その後、彼女を引き取り、兄妹のような関係で育てますが、14歳の時に男女の仲になります。紫の上は光源氏を兄のように慕い、光源氏も彼女を最愛の女性として愛しました。

紫の上の苦悩

紫の上は光源氏から最も愛された女性ですが、彼女の人生は苦悩に満ちていました。光源氏が他の女性と関係を持つたびに心を痛め、特に女三の宮を正妻として迎えた時には大きな衝撃を受けました。彼女は自分の身の不安定さに苦しみ、最終的には心労が重なって重病となります。このように、紫の上と光源氏の関係は、愛情と苦悩が交錯する複雑なものでした。

紫式部が『源氏物語』で紫の上に子供を産まない設定にした理由には、いくつかの説があります。

  • 物語の展開上の理由:子供が生まれると、物語の焦点が男女間の愛情から子供に移ってしまい、純粋な恋愛を描くのが難しくなるから。
  • 仏教的な思想:紫の上に子供を産ませないことで、光源氏に因果応報の仏教的な教えを示すため。
  • 物語の厚みを増す:紫の上に子供を産ませると、物語がハッピーエンドになってしまい、物語の深みが失われるから。

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  • ① 明石の君 ② 光源氏
  • 2
  • ③ 謙譲語 作者から光源氏 ④ 尊敬語 作者から光源氏
  • ⑦ 断定の助動詞「なり」連用形(「に」の後に「あり」があるときはこれ)