


朗読 紀貫之『土佐日記』「門出」(冒頭)

超訳マンガ百人一首物語第三十五首(紀貫之)
本 文
それの年の十二月の二十日あまり一日の日の戌の時に、門出す。そのよし、いささかに物に書きつく。
ある人、県の四年五年はてて、例の事どもみなし終へて、解由など取りて、住む館より出でて、船に乗るべき所へ渡る。かれこれ、知る知らぬ、送りす。年ごろ、よく くらべ つる人々なむ、別れ難く思ひて、日しきりに とかくしつつ、ののしるうちに、夜更けぬ。
二十二日に、和泉の国までと、平らかに 願立つ。藤原のときざね、船路 なれど、馬のはなむけす。上中下、酔ひ飽きて、いとあやしく、潮海のほとりにて、あざれ あへ り。
口 語 訳
助動詞に注意しながら、以下の( )にふさわしい言葉を入れてください。
男もする( )日記というものを、女〔の私〕も書いてみようと思って、する( )。
ある年の十二月二十一日の( )時ごろに、出発する。そのときのことを、( )物に書きつける。
ある人が、国守の( )の四、五年が終わって、所定の事務引き継ぎもすっかり終わらせて、( )状などを受け取って、住んでいる官舎から出て、船に乗る( )ところへ移る。あの人やこの人、知っている人も( )人も、見送りをする。( )たいそう親しく( )人々は、別れがたく思って、( )、あれこれとしながら、( )をするうちに、夜が( )。
二十二日に、和泉の国まではと、( )であるように神仏に祈願する。藤原のときざねが、船旅であるけれど、( )をする。( )高い人も、中位の人も、低い人も、みなすっかり酔っぱらって、たいそう( )なことに、〔塩のきいている〕海のそばで( )あっている。

問 題
探究的な考察

まみ: ゆうな、最近の国語の授業で「土佐日記」の「門出」について学んだよね。どう思った?

ゆうな: うん、面白かったよね。紀貫之が女性のふりをして日記を書いたっていうのが特に興味深かった。あの時代に男性が女性の視点で書くなんて、珍しいよね。

まみ: そうだね。平安時代の文学って、女性が書いたものが多いけど、男性が女性のふりをして書くのは確かに珍しいよね。紀貫之はどうしてそんなことをしたんだろう?

ゆうな: たぶん、女性の視点で書くことで、より感情豊かに表現できると思ったんじゃないかな。それに、当時の女性の日記文学が人気だったから、それに合わせたのかも。

まみ: なるほどね。それにしても、「門出」の部分って、紀貫之が土佐から京に帰る旅の始まりを描いているよね。あの部分、どうだった?

ゆうな: うん、最後が印象的だった。船旅の安全を神さまに祈ったり、馬のはなむけなんて、ちっとも知らなかったし。あと、ちょっとユーモアも感じたよ。例えば、「腐る」と「ふざける」を掛詞にしてるとことか…。

まみ: そうだね。あ、あと文学史的に見ても、「土佐日記」は日本最古の日記文学の一つとして重要だよね。紀貫之がこの作品を通じて、日記文学の新しいスタイルを確立したんだと思う。

ゆうな: たしかにね。紀貫之の「土佐日記」は、後の時代の多くの作家に影響を与えたんだろうね。特に、女性作家たちにとっては大きなインスピレーションになったんじゃないかな。

まみ: ところで、ゆうなは他にどんな日記文学があるか知ってる?

ゆうな: うん、例えば「蜻蛉日記」って知ってる?藤原道綱母が書いた日記で、彼女の結婚生活や子育ての苦労が描かれているんだよ。とても感情豊かで、当時の女性の生活がよくわかる作品だよ。


まみ: へえ、面白そうだね。他には?


ゆうな: あとは「更級日記」も有名だよ。菅原孝標女が書いたもので、彼女の少女時代から老年期までの人生が描かれているんだ。特に、彼女が若い頃に読んだ物語文学への憧れが印象的だよ。


まみ: なるほど、平安時代の女性たちがどんな風に生活していたのかがよくわかるね。もっといろいろな日記文学を読んでみたいな。


ゆうな: そうだね。ちなみに、女流日記を成立順番にならべると「土佐日記」、「蜻蛉日記」、「和泉式部日記」、「紫式部日記」、「更級日記」、「讃岐典侍日記」、「建礼門院右京大夫集」、「十六夜日記」、「とはずがたり」だよ。


まみ: ええっ?そんなにたくさん?覚えられないよ~。


ゆうな: 「と・かげ・の・いずみ・は・むらさき・で・さらしな・さぬき・けんれいもん・いざよい・とわず」って覚えればいいの!土佐日記が一番古いっていうのはよくテストにでるし、あとは蜻蛉日記のほうが更級日記より古いってことがよく問題になるかな。


まみ: すごーい!ありがとう!
答 え
ある年の十二月二十一日の(午後八)時ごろに、出発する。そのときのことを、(少しばかり)物に書きつける。
ある人[紀貫之]が、国守の(任期)の四、五年が終わって、所定の事務引き継ぎもすっかり終わらせて、(解由)状などを受け取って、住んでいる官舎から出て、船に乗る(はずの・ことになっている)ところへ移る。あの人やこの人、知っている人も(知らない)人も、見送りをする。(長年)たいそう親しく(付き合った)人々は、別れがたく思って、(一日中)、あれこれとしながら、(大騒ぎ)をするうちに、夜が(更けてしまった)。
二十二日に、和泉の国まではと、(無事)であるように神仏に祈願する。藤原のときざねが、船旅であるけれど、(馬のはなむけ)[=送別の宴]をする。(身分の)高い人も、中位の人も、低い人も、みなすっかり酔っぱらって、たいそう(不思議な)ことに、※〔塩のきいている〕海のそばで(ふざけ)あっている。
※「あざる」は魚肉が腐るを意味する「あざる」と、ふざけるを意味する「あざる」がかかった掛詞。塩は防腐剤と しての性質もあるので、その側で(魚が)腐るのは不思議だというユーモアが込められている。
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