
加藤千恵「卒業するわたしたち」|小学館の本
加藤千恵(1983年11月10日生まれ、北海道旭川市出身の歌人・小説家・立教大学文学部日本文学科卒業)彼女の小説は毎日の暮らしの中で感じる、ちょっとした気持ちの変化や、ありふれた恋や友だちとの関係、何気ない出来事を細かく描く書き方が特徴です。突飛な事件や大きなドラマではなく、「彼氏とのちょっとした喧嘩」や「友達との他愛のない会話」など、誰もが経験するような日常の一コマをリアルに描き、読者に安心感や共感を与えると評価されています。また、加藤千恵は歌人としても活躍しており、短歌的な感性や言葉選びのセンスが小説にも生かされているのが大きな特徴です。短編集が多く、物語の後に自由律短歌が添えられている作品もあり、詩的な余韻や情感が物語をより深く味わわせてくれます。代表作には『ハニービターハニー』『真夜中の果物』『さよならの余熱』『ハッピーアイスクリーム』などがあり、どれも瑞々しい筆致で恋愛や人間関係を描いた作品として人気があります。
要 約
この場面での登場人物 | 関係・特徴 |
---|---|
朔美(主人公) | 大学生。物語の語り手。家族と同居。運動が苦手。 |
和仁 | 朔美の恋人。朔美に逆上がりへの挑戦を提案する。 |
祖母 | 物忘れが激しくなっている。卒業祝いを送る。 |
母 | 朔美と同居。祖母の勘違いに気づき、対応する。 |
『引力に逆らって』 人物相関図
祖母 ─── 伯母 ─── 伯母の夫・息子
│
├─ 母 ── 父 ── 兄
│
└─ 朔美(主人公)── 和仁(恋人)
《第一段落》
三月のある日、朔美(さくみ)の元に離れて暮らす祖母から「卒業祝い」として深いブルーの万年筆が届く。しかし、朔美はまだ大学を卒業しておらず、家族にも卒業する人はいない。祖母は物忘れが激しく、高校卒業と勘違いしていたことが判明する。母は「送り返さずに使って」と言い、朔美は万年筆を受け取ることに。その後、朔美は友人の和仁に電話でこの出来事を話す。和仁は「せっかくだから、明日会ったときに何か“卒業”しよう」と提案する。二人は「明日中にできる小さなことを卒業する」というテーマで会う約束をする。朔美は「卒業」という言葉を改めて考え、日常の中で新しい一歩を踏み出すきっかけを感じる。
《第二段落》
朔美はカフェで和仁と待ち合わせ、「卒業すること」について考えた三つのプラン(体験教室に行く、卒業ソングをカラオケで歌う、高校に忍び込む)を提案するが、和仁はどれも納得しない。代わりに和仁は「運動嫌いからの卒業」として、朔美が苦手な逆上がりに挑戦しようと提案する。朔美は戸惑いながらも、和仁の意外な記憶力や前向きな提案に驚きつつ、その流れに乗ることになる。

《第三段落》
朔美と和仁は、逆上がりに挑戦するために公園へ向かう。人目を気にしつつも、和仁のアドバイスを受けながら何度も挑戦するが、なかなか成功しない。できなくても生活に支障はないと感じつつも、「卒業」という目標のため、諦めずに再挑戦する。ついに朔美は逆上がりに成功し、和仁と喜びを分かち合う。初めての成功体験により、見える景色や気持ちが変わり、小さな挑戦が世界を鮮やかに変えることを実感する。


「小さな一歩を踏み出すことで、世界や自分自身の見え方が鮮やかに変わること」
朔美は、祖母の勘違いから届いた卒業祝いをきっかけに、普段避けてきた苦手な逆上がりに挑戦します。失敗を重ねながらも、和仁の励ましを受けて努力し、ついに成功を経験します。この体験を通じて、主人公は「できない」と思い込んでいた自分から一歩踏み出し、達成感や周囲とのつながり、そして新しい視点を得ることができました。日常生活の中のささやかな挑戦や変化が、自分の成長や世界の見え方を大きく変えるというメッセージが込められています。
探究的な考察

すみれ:ねえ、ここな、この小説さ~、やっぱ人生って逆上がりできたら全部うまくいくって話だよね!私もさ、プリクラで変顔とか挑戦したとき、世界変わった気がしたもん!

ここな:ううん、すみれ。逆上がりができるようになること自体が大事なんじゃなくて、普段の生活でちょっと苦手なことに挑戦してみる、その気持ちが大切っていう話なんだと思うよ。

すみれ:え?でもさ、苦手なことって、できなくても別にヤバくなくない?私、体育ずっとサボってたけど、今ギャルやれてるし!

ここな:た、たしかに、生活に困ることは少ないかもしれないね。でも、そこを挑戦することで、自分の見方や感じ方が変わるっていうのがこの小説のメッセージなんだよ、たぶん。ほら!この前、すみれもプリクラで新しい自分見つけたって言ってたでしょ?

すみれ:あ~ね~。あっ!じゃあ、私が新しいネイルに挑戦したときも成長ってこと?やばっ、私、毎日成長してるじゃん!

ここな:ははは…うん、そう、そうだね。そういう小さな変化も大切だと思う。あと、朔美が一人じゃなくて、和仁くんと一緒に挑戦したみたいに、誰かと一緒だと勇気も出るし、喜びも大きくなるよね。

すみれ:あ~、和仁!彼氏じゃん!確かに彼氏と一緒なら、なんでも楽しいし!ね?ここなも今度一緒にやってみようよ、ギャル!あ、ウチ、なんか何でもできる気がしてきた!

ここな:え?ギャ、ギャルかあ。(絶対…ムリ。でも…ま、いっか)うん、そうね、すみれとなら楽しく何にでも挑戦できそう。どんなことでも、前向きにやってみるのが大事だね。
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