神社に眠る勾玉が呼ぶ運命『失われた七つの勾玉』完全版 – 第一章

- 第一章 小志貴神社… 4
- 第二章 小手姫伝説… 37
- 第三章 御岩神社… 73
- 第四章 古峯神社… 103
- 第五章 竜神池… 135
- 第六章 優、覚醒のとき… 167
- 第七章 優、飛翔… 200
- 第八章 太宰府天満宮… 234
- 第九章 渋谷氷川神社… 266
- 第十章 大将軍神社… 294
- 第十一章 豊国神社… 321
- 第十二章 伊勢神宮… 354
- 第十三章 高木という男… 386
- 第十四章 建勲神社… 414
- 第十五章 カフェ・ド・ノーラ.. 446
- 第十六章 絶体絶命… 476
- 第十七章 最終決戦… 499
第一章 小志貴神社
坂本心はもうすぐ大学を卒業する。今年の冬はとても寒かった。特に年末に大雪が降って雪かきが大変だった。でも、もうすぐ東北ともお別れになる。
「ねえねえ、卒業する前に神社巡りしない?」と心が言った。
「いいね、私も行きたい」景が答えると
「どこから行く?」千尋が楽しそうに言った。
心は同級生の景と千尋の三人で一時間以内で行ける神社をググった。
「小志貴神社だって。なんて読むんだろう?」心が尋ねると
「こしきじんじゃ、だって」千尋が答えた。
「へえ。私の大阪の家の近くに甑岩神社っていうのがあるよ」と景が言った。
三人は興味深そうにネットに書かれている情報を読んだ。
「あ、なんか伝説があるって」すぐに心が見つけた。
「へえ、白鹿伝説?なんだろう?」景は興味深そうに言う。
「猿に襲われた中納言を白い鹿が助けたってさ」千尋はあまり興味がないようだった。
景はナビに小志貴神社と入れた。ここから三十分ほどの所に小志貴神社はあった。
「着いた!」運転していた景が叫んだ。
「やっぱり、山の中は自然がいっぱい!気持ちいい」心が言うと
「寒いよ!ここ」と千尋が文句を言った。
三月の下旬だというのにここはひんやりとした空気が漂っている。心が神社の側にある案内板に気づいた。
「創建1117年だって。千年くらい前?」
「すごい古い」と景が言う。
「牡丹獅子舞だって」千尋が興味を示した。
三人が騒いでいるとそこへ中年の男性が近づいてきた。
「こんにちは。ようこそ、小志貴神社へ」
「こんにちは。こしき神社なんですね」心が明るく挨拶をした。
「あの、ここは獅子舞あるんですか?」千尋が尋ねた。
「ありますよ、秋に。隔年で獅子舞も出ますよ」
「隔年?」千尋が不思議そうに言った。
「一年おきです」
「そうなんだ」
心が三人でここへ来た理由を話し出した。
「ネットでここに伝説があるって書いてあったんですが」心が尋ねる。
「山蔭中納言伝説ですか?それとも白馬のことかな?」
「白鹿の伝説です」
「それだったら山蔭中納言伝説ですね。隣町の春日神社の伝説と同じやつです」
「ここの伝説じゃないんだ」心はがっかりした。
「伝説だから、けっこういい加減でどっちが本当か分かりません」
「なんだあ」
心の言葉を聞いて、みんなが微笑んだ。
「でも、もっと不思議な伝説があるんですよ」
「え?どんな?」景が聞いた。




