列女伝 劉向

白  文

謂 曰、「君 有 不 善、子 宜 掩 之。今、自 子 率 君 而 為 之、不 待 幽 間 於 朝 廷 以 戯。士 民 其 謂 爾 何。」二 人 以 告 霊 公。霊 公 曰、「衆 人 知 吾 之 不 善、無 害 也。泄 冶 知 之、寡 人 恥 焉。」乃 使 人 微 賊 泄 冶 而 殺 之。

書き下し文

 謂ひて曰はく、「君に不善有らば、子宜しく之を掩ふべし。今、子より君を率ゐて之を為し、幽間を朝廷に待たずして以て戯る。士民其れ爾を何と謂はん。」と。二人以て霊公に告ぐ。霊公曰はく、「衆人吾の不善を知るも、害無きなり。泄冶之を知るは、寡人恥づ。」と。乃ち人をして微かに泄冶を賊して之を殺さしむ。

訓読(現代仮名遣い)

いいていわく、「きみにふぜんあらば、よろしくこれをおおうべし。いま、しよりきみをひきいてこれをなし、ゆうかんをちょうていにまたずしてもってたわむる。しみんそれなんじをなんといわん。」と。ににんもってれいこうにつぐ。れいこういわく、「しゅうじんわれのふぜんをしるも、がいなきなり。せつやこれをしるは、かじんはづ。」と。すなわちひとをしてひそかにせつやをぞくしてこれをころさしむ。

口 語 訳

 (泄冶せつやが)言うことには、「君主によくないことがあれば、あなた方がこれ(不善)をやめさせるのがよい。今、あなた方から君主を誘ってこれ(不善)を行い、夕方を朝廷で待たないで(夕方を待ちきれずに)それで遊んでいる。役人や人民はいったいあなた方を何と言うだろうか。」と。(朝臣の中の)二人がそのことを霊公に告げた。霊公が言うことには、「人々が私のよくない行いを知っても、害はないのだ。(だが)泄冶がこれを知るのを、私は恥じる。」と。そこで人に(命じて)密かに泄冶を襲わせて、彼を殺させた。

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