
鬼瓦:今日はですね、森鴎外の名作「舞姫」をお送りします。
福島:はい。僕が主人公の太田豊太郎、25歳です。
鬼瓦:で、俺が16歳の踊り子、エリス。
福島:ちょっと待て。
鬼瓦:何?
福島:16歳の美少女踊り子をお前がやるの?
鬼瓦:やるよ。文句あるか。
福島:…まあ、演技力でカバーしてくれ。


福島:(ベルリンの街で)ドイツ留学3年目…ベルリンの古い教会か。毎日勉強ばっかりで人生つまらないなあ…
鬼瓦:(教会の前で)シクシク…シクシク…
福島:ん?誰か泣いてる…大丈夫ですか?
鬼瓦:(顔を上げて)あ…すみません。
福島:なんて美しい…君はどうして泣いているんですか?
鬼瓦:私…お金がなくて…300万円必要なんです。
福島:300万円!?何に使うの?
鬼瓦:ドレス欲しい。
福島:は?ドレスが300万円!?
鬼瓦:じゃあ、宝石。
福島:お金欲しいってそんな理由かい!
鬼瓦:実は…父が亡くなって葬式代がないの。
福島:は?けっこう、深刻な話じゃないか。仕事は何してんの?
鬼瓦:私はエリス。16歳。踊り子をしてるけど貧しくて…
福島:踊り子?何の踊り?
鬼瓦:バレエ。見てみる?
福島:おお、見てみたいね!
鬼瓦:(阿波踊りみたいな動きをする)
福島:阿波踊りじゃねえか…それがバレエなのか?
鬼瓦:創作バレエ。
福島:創作って言えば何でもいいと思ってるでしょ。
鬼瓦:何言ってるか分からない。
福島:いやいや、自分で創作バレエって言ったし…
鬼瓦:客が全然来なくて、劇団の座長から嫌な要求されてるの。
福島:嫌な要求?
鬼瓦:「お葬式代を出してやるから俺の妾になれ」って。
福島:妾!?
鬼瓦:そう。
福島:それは許せないな!座長何歳?
鬼瓦:60歳。
福島:60歳!?
鬼瓦:しかもハゲ。
福島:それは断りなさい!
鬼瓦:あなたが助けてくれるの?
福島:仕方ないな!僕は日本から派遣された官吏だ。国からお金もらってるから!
鬼瓦:官吏?
福島:そう。エリート官僚として3年働いて、ドイツ語やロシア語なんかも他の誰より上手に話せるんだ。
鬼瓦:何言ってるかわからない。
福島:は?そこはすごい!って言うとこでしょ!
鬼瓦:良かった!じゃ、お葬式代 お願いします。
福島:困ったときはお互い様だから。いくら?
鬼瓦:50万円。
福島:50万?さっき300万って言わなかった?
鬼瓦:何言ってるかわからない。
福島:言ったよ!最初ドレス買うって言って、宝石になって、今度は葬式代で値段下がってるじゃん!
鬼瓦:お葬式だから安くしといたわ。
福島:安くって…まあいいや。
鬼瓦:ありがとう!


鬼瓦:豊太郎さま〜、おかげで無事にお葬式が終わったわ!一緒にお散歩に行きましょ〜!
福島:ああ、いいね。エリス、元気になって良かったね。
鬼瓦:そりゃそうよ。おかげで座長の妾にならなくて済んだし。
福島:こっちも日本人の仲間にいやがらせされてて、君といると心が安らぐ。
鬼瓦:毎日一緒にいられて幸せ。
福島:でも最近、日本から手紙がたくさん来るんだ…
鬼瓦:え?どんな?
福島:「いい加減帰ってこい」とか「学費返せ」とか。
鬼瓦:いや、行かないで!帰るなら私も連れてって!
福島:帰らないさ、君といたいからね。
鬼瓦:うれしい!実はお話があるの。
福島:話?
鬼瓦:私…実は21歳なの。
福島:え?16歳じゃなかったの?
鬼瓦:森鴎外が嘘ついて、年齢変えたの。
福島:作者が?なんで若くしたの?
鬼瓦:踊り子は若い方がモテるから。
福島:でも、25歳と16歳の恋愛って、犯罪じゃん。
鬼瓦:何言ってるかわからない。
福島:わからないって…まあいいや。で、何の告白?
鬼瓦:妊娠してるの。
福島:え!?
鬼瓦:あなたの子よ。
福島:ちょっと、記憶にない。
鬼瓦:いやいや、あなたでしょ!責任取って!
福島:でも、僕には日本からの帰国命令が…
鬼瓦:いや!お願い、断って。
福島:でも、断ったらクビになる…
鬼瓦:愛と出世、どっちが大事なの?
福島:それは…愛だ!君を選ぶ!
鬼瓦:本当?
福島:ああ!もう日本なんてどうでもいい!
加藤:(突然、相沢が登場)太田、さがしたよ。
福島:あ?相沢?
加藤:今、着いたところだ。実は大臣がおまえに会いたがってる。
鬼瓦:大臣?
加藤:大臣がおまえの才能を高く評価していて、重要な仕事を任せたいと。
福島:でも、僕はエリスと…
加藤:エリス?
福島:この子だ!彼女を愛してるんだ!
加藤:まだ、子どもじゃないか!
福島:いや、もう…子どもができたんだ。
加藤:とにかく、大臣に会ってみろ。話だけでも聞くんだ。
福島:…わかった。話だけなら。
鬼瓦:トヨタロウサマ?ナニヲハナシテルノ?ワタシ、ニホンゴワカリマセン。
福島:大丈夫だよ。安心して。
(豊太郎の心の声)どうしよう…エリスには何て言えばいいんだ…大臣の話なら、すごい出世のチャンスかも…でもエリスを裏切ることになる…(その場を離れる)
加藤:(エリスに近づき英語で言った)実は豊太郎さんは日本に帰ることになったんです。
鬼瓦:え?
加藤:もう決まったことなんです。
鬼瓦:そんな…私を置いて行くの?
加藤:仕方ないんです。
鬼瓦:我が豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺きたまひしか…(発狂)あーーー!
福島:(戻って来ると発狂したエリスに気づく)エリス!?どうした!?
加藤:なんか急におかしくなった。
福島:おかしくなったって…おまえ、何をした?
加藤:これはパラノイアだな。
福島:パラノイアって何?
加藤:精神病。
鬼瓦:(ボーッとしながら)薬を…薬を…
福島:エリス…僕だよ、豊太郎だよ…
鬼瓦:誰?
福島:エリス、僕を忘れちゃったの?
鬼瓦:赤ちゃん…お腹の赤ちゃん…
福島:(泣きながら)ごめん…ごめんよ…
加藤:そろそろ、日本に帰る時間だ。おまえも一緒に帰るぞ。
福島:もうそんな時間か…まあ、仕方ないか。
加藤:お金は置いていくんだろ?
福島:ああ。エリスのお母さんに生活費を置いていく。
加藤:それで十分だ。行くぞ。大臣もお待ちかねだ。
福島:じゃあ、行くか。(去る)
鬼瓦:(一人残されて)薬を…薬を…


加藤:というわけで、愛よりも帰国を選んでしまった豊太郎でした。
福島:結局、お金かよ!
加藤:僕、悪者でした。
福島:確かに一番悪いの相沢だよね。
鬼瓦:いやいや、無責任で優柔不断なのは豊太郎だし。
福島:俺が一番悪いの!?
鬼瓦:そうだよ。エリスを妊娠させといて、逃げるんだから。
福島:でも、エリスが勝手に好きになってきたから…
鬼瓦:じゃあ、みんな悪いってことで。
加藤:なんじゃ、そりゃ!
三人:ありがとうございました〜!




