2026年1月17日実施 大学入学共通テスト 国語 解説
2026年1月17日実施 大学入学共通テスト 国語 問題はここ
大学入試センター中間発表 平均116.08点
第1問 (出典)櫻井あすみ「『贈与』としての美術・ABR」

日本画の技法を用いた作品制作を行う美術家(日本画家)
要約 この文章は、言葉や意味によって整理された「交換可能な世界」では捉えきれない芸術体験を、作者自身の体験と制作論を通して考察し、美術制作を「制御された表現」ではなく、受け取られる保証のないものを他者に差し出す「贈与」として捉え直している。櫻井あすみ
※この文章は、言葉や経済的な「交換」では割り切れない美術表現を、「贈与」という考え方で捉え直す評論。
(第1~2段落は問題提起)体験の提示と違和感の表明
- 「わたし」は、社会の中で共有されている
・言葉
・意味
・暗黙の了解(約束事)
に、うまくなじめない存在として描かれる。 - 「これは雑草だ」などの言語的ラベルが物を見る経験を縛っているということが示される。
- そのラベルから一時的に解放され、対象をただ眺めるときの心地よさが語られる。
※個人的体験を用いて、「言葉以前の経験」が提示される導入部
制作行為の再定義(第10段落付近)制作観の転換
- 美術制作は、作者の意図どおりに進むものではない。
- 素材と向き合う中で、作者自身も予想しなかった形や意味が立ち現れる。
- 制作は「一方的な表現」ではなく、素材との対話であると捉え直される。
※芸術制作を「制御可能な行為」から切り離す段階
個人体験から普遍化へ(第12段落)論の対象範囲を広げる転換点
- 冒頭で語られた体験は、単なる思い出話ではないと明示。
- それは、あらゆる芸術体験の根源に関わるものだと位置づけ。
※「私の話」から「芸術一般の話」へと論を広げる部分
交換と交換不可能性(第17段落)概念整理(交換/非交換)
- 日常世界は「交換可能」なもので成り立っている。
- 誰にでも通じる
- 代替可能
- 説明可能
- しかし、芸術体験には、突如として「交換不可能」なものが現れる。
- 自分にしか起こらない、言葉にできない
- 置き換えがきかない
※世界が単一の論理では成り立っていないことを示す
結論 贈与としての制作(第19段落)全体のまとめ
- 制作とは、
- 自分でも完全には理解できないものを生み出し、それが受け取られる保証もないまま、他者に差し出す行為。
- それは経済的な「交換」ではなく、「贈与」と呼ぶべき行為。
※冒頭の体験・制作論・交換論を一語で回収する
ポイント
- ❌ 思想として深く理解しようとしない
- ⭕ 段落ごとの役割を押さえる
- ⭕
- 冒頭:体験提示
- 中盤:制作観の転換
- 後半:交換/非交換
- 結論:贈与
という構造を追う
問1
(ア)反芻(すう)→ 正解は 1:枢
(イ)梢(こずえ)→ 正解 3:陶酔 「トウスイ」の「トウ」。
(ウ)根幹 → 正解 3:基幹「キカン」の「カン」。
(エ)窺って → 正解 2:借用「シャクヨウ」の「シャク」。
(オ)彷徨う → 正解 3:ここは深読みしない。
問2
正解は 3
第1〜2段落に注目。「わたし」は、周囲の見えない約束事や言葉のラベルから離れ、対象をそのまま眺めることで、解放感と心地よさを得ている。
問3
正解は 2
第10段落。制作とは、作者の意図どおりに進むものではない。素材と格闘する中で、思いもよらない姿が立ち現れる。ここでは「素材との対話」という考え方が重要。
問4
正解は 2
第12段落。
個人的な思い出話を超えて、それが芸術体験全般に通じる普遍的な真理であると示す。論理の転換点を問う設問。
問5
正解は 3
第17段落。
日常の「交換可能な世界」の中に、突如として「交換不可能な美」が現れる。その経験によって、世界が単層ではないと気づく過程を説明している。
問6
正解は 1
第19段落。
制作とは、制御できない「わかりえないもの」を生み、受け取られる保証もなく他者に差し出す行為。これを「贈与」とまとめている。
第2問 (出典)遠藤周作「影に対して」

- 遠藤周作(1923年-1996年)は日本の精神風土とキリスト教の関係を追求し続けた日本を代表する作家
要約 この文章は、語り手が子ども時代を回想しながら、音楽への情熱を捨てて家庭に従った母の生き方を描き、当時は理解できなかったその苦しみと犠牲を、成長後に痛みをもって理解する過程を示している。母の音楽への情熱と、父の「平凡な家庭」への価値観の衝突を、息子・勝呂の回想で描いた作品。遠藤周作「影に対して」
語り手の立場の設定(回想の視点を明確にする)
- 語り手は、成長した後の「私(勝呂)」。
- 子ども時代の母の姿を、現在の視点から振り返る(回想形式)。
- 物語全体が、当時は理解できなかった母の姿を、後になって理解し直す構造。
※「当時の子ども」と「現在の大人」の二重の視点
母の音楽への情熱(病室の場面→母の本質が書かれる)
- 病室で、母はヴァイオリンを思い、指で練習するしぐさを見せる。
- 子どもの勝呂は、看病より音楽が大切なのではないかと感じ、寂しさや嫉妬を抱く。
※母にとって音楽が生の核心であることが示される
父の価値観との対立(家庭内の緊張関係の提示)
- 父は「平凡な家庭」を重んじる人物。
- 母の音楽への情熱は、父にとって家庭を乱すものと受け取られる。
- 母は父の価値観に従い、ヴァイオリンをやめる。
※理想(情熱)と現実(家庭生活)の衝突
表面的な平和と母の変化(犠牲の可視化)
- ヴァイオリンをやめたことで、家庭には一時的な平和が訪れる。
- しかし母は、哀しそうな微笑、無理に作られた穏やかさを見せるようになる。
※平和の代償として、母の内面が損なわれている
「幸せ」という言葉の裏側(本心と建前)
- 母は友人に対し、自分は幸せだと語る。
- しかしその言葉の裏には、音楽への未練、自分の人生を選びきれなかった意地が潜んでいる。
※言葉と本心のずれが明確化される
語り手の理解の変化(主題)
- 子どもの頃には分からなかった母の苦しみを、大人になった勝呂は理解する。
- 母の生き方の厳しさは、今の自分にとっても重く、痛みを伴うものとして受け取られる。
※母の人生を理解すること自体が、残酷な体験である
ポイント
- ⭕ 母は「家庭を壊した人物」ではない
- ⭕ 父も「悪者」とは断定されていない
- ⭕ 問われているのは価値観の対立そのものではなく、その結果として生じた母の内面
- ❌ 「音楽=善/家庭=悪」と単純化しない
- ❌ 象徴(ホットケーキ等)を過剰に意味づけしない
問1
正解は 2
病室で、母が指でヴァイオリンの練習をしている場面。勝呂は、看病より音楽が優先されていると感じ、寂しさと嫉妬を覚えている。
問2
正解は 3
母がヴァイオリンを封印したことで、家庭に一時の平和が訪れる。それを「父の満足」と結びつけている。
問3
正解は 4
母の「哀しそうな微笑」は、普通の主婦を演じながら、音楽という魂の一部を殺している苦しさの表れ。
問4
正解は 1
母が友人に「幸せだ」と言った言葉の裏には、情熱への未練や意地がある。大人になった勝呂は、その感情を理解できるようになっている。
問5
正解は 2
ホットケーキは、「西洋文化の象徴」ではない。家庭的な幸福を示す小道具にすぎないので、深読みは禁物。
問6
空欄ア:1
安全な道ではなく、砂浜に足跡を残す生き方。
空欄イ:4
母の生き方の厳しさが、今の勝呂に突き刺さる残酷さ。
第3問 絵本『イワシ むれでいきる さかな』と科学資料の比較。

小さいイワシが、さまざまな危険から生き延びるため、仲間と群れになって泳ぎ続ける。途中でたくさんのイワシが犠牲になって数が少なくなっても、別の群れと合流して、また命を繋いでいく。(本の紹介文より)
要約(資料読み取り)資料Ⅰは、イワシの生き方の中で最も伝えたい点を強調するために情報を絞った絵本制作の立場を示し、資料Ⅱは、イワシの生態を客観的に整理した科学資料として事実を示している。
全体像(最初に押さえること)
第3問の資料は、同じ「イワシ」を扱いながら、役割の異なる2種類の資料で構成されている。
- 資料Ⅰ:絵本制作者(編集者)の立場の説明
- 資料Ⅱ:科学的事実を整理した客観資料(図・説明)
※「どちらが正しいか」ではなく、「何を、どこまで、どう示しているか」を比較させるのが目的。
① 資料Ⅰの立場
- 絵本『イワシ むれでいきる さかな』の編集・制作に関わった人物の説明。
- 科学的事実をすべて網羅する立場ではない。
② 資料Ⅰで述べられていること
- 絵本では、あえて情報を絞っている。
- その理由は、イワシの生き方の中で、最も伝えたい点を際立たせるため。
③ 絞られている情報の性質
- 個体としての細かな行動や仕組み(例:餌の食べ方、細部の生理)
- 科学的に詳細な説明
※「省略=事実を隠す」ではない→「省略=焦点化」
④ 資料Ⅰのメッセージ
- イワシは、
- 個としては死ぬことがある
- しかし、群れとして命をつないでいく
- 絵本は、この点を子どもに強く印象づけるために構成されている。
⑤ 資料Ⅱの立場
- 科学的・客観的に整理された説明資料。
- 教育的・説明的な目的。
※感情に訴える資料ではない。
⑥ 図・説明が示している内容
- イワシの回遊
- 群れとしての移動
- 環境との関係
※重要→捕食方法(どうやって餌を食べるか)までは示していない。
⑦ 資料Ⅱの特徴
- 事実関係を、図や簡潔な説明で示している。
- 情報量は多いが、メッセージ性は前面に出ていない。
⑧ 資料Ⅱが「していないこと」
- 生き物の世界の厳しさを感情的に強調すること
- 子ども向けに印象を操作すること
※事実を淡々と示しているだけ
資料Ⅰと資料Ⅱの比較
| 観 点 | 資 料 Ⅰ | 資 料 Ⅱ |
| 目 的 | メッセージを伝える | 事実を示す |
| 情 報 量 | 絞っている | 多い |
| 表 現 | 印象的・感覚的 | 客観的 |
| 省 略 | 意図的 | なし |
※どちらかが不正確なのではない。ただ、役割が違うだけ
ポイント
- ❌ 「資料Ⅰは事実を隠している」
- ❌ 「資料Ⅱの方が正しい」
どちらも 正しい。でも、目的が異なる
- ⭕ 「資料Ⅰは焦点化している」
- ⭕ 「資料Ⅱは網羅的である」
問1
正解は 3
情報を絞ることで、「個としては死んでも、群れとして命が続く」というメッセージを強調。個体の死を超えて「群れ」として命を繋いでいくという絵本の核心的なメッセージを反映した表現を選ぶ。
問2
正解は 2
主題は「群れ」。個体の摂食行動は、優先度が下がる。編集方針である「メッセージの絞り込み」に基づき、主題の「群れ」に直接関係の薄い「餌」の記述を削除すればよい。
問3
空欄a・b(誤りを含むもの) 1・6
- 図2が「捕食方法」を示しているわけではない点、資料IIが「厳しさを強調しすぎない」ことを目的としているわけではない点を見抜く。
◎今後の方針 3
- 情報の取捨選択や臨場感といった特徴が、他の科学絵本と比較してどうなのかを検討する流れが妥当。
第4問 出典『うつほ物語』

【共通テスト】清少納言と紫式部も読んでいた!
「うつほ物語」ってどんな作品?【古典Vtuber/よろづ萩葉】
『うつほ物語』あらすじ
『うつほ物語』は、秘伝の琴の音楽を受け継ぐ一族を中心に、その音色が人の心や運命、さらには自然現象にまで影響を及ぼすさまを描いた、平安時代初期の長編物語である。今回、出題されているのは、琴の名手である 尚侍(母)、その子である仲忠。この二人を中心に、琴の力、親子の関係、演奏の性質の違いが語られる場面。
※物語全体の中では、「琴の一族」の特別性を最も象徴的に示す場面。
出題された部分の要約
この場面では、秘伝の琴を受け継ぐ尚侍とその子仲忠が描かれ、仲忠の非凡な才能と、それを包み込む尚侍の慈愛深い姿が示されるとともに、激しさをもつ仲忠の演奏と、人を癒やす調和的な尚侍の演奏とが対比され、尚侍の琴の力がとりわけ高く評価されている。
【前半】仲忠の誕生と琴への関心
- 仲忠は、生まれて間もないのに、すでに琴(龍角)を欲しがる。
- 周囲はその様子に、非凡さを感じ取る。
【中盤】母・尚侍の反応
- 母は、仲忠の様子を見て微笑み、「まだ早い」とたしなめる。
- ここで、子の将来性と母の余裕と慈愛が示される。
【後半】母子の演奏の対比
- 仲忠の琴は、
- 激しく
- 風を起こすほどの力をもつ。
- 尚侍の琴は、
- 人の病を忘れさせ
- 命を長らえさせるような
穏やかで調和的な力をもつ。
※同じ琴でも、性質が異なることが強調される。
【結び】周囲の評価
- 帝や右大臣は、尚侍の琴の力を高く評価する。
- 仲忠以上に、尚侍の演奏が神秘的で尊いものとして語られる。

ポイント
- ❌ 仲忠が「未熟」だと断定しない
- ❌ 尚侍を単なる「母親像」に矮小化しない
- ⭕ 演奏の性質の対比が中心
- ⭕ 評価は尚侍の方が高いという事実
問1
ア 1(えなむ…弾かざる←省略されている):〜できない) イ 3(はしたなし:体裁が悪い) エ 2(てむ:強意+推量)
問2
正解は 4。
「聞こしめせ」は尊敬語。文脈から、仲忠から母(尚侍のおとど)に対する敬意の方向を正確に押さえる。
問3
正解は 2。
出産直後に琴を求める仲忠に対し、母が「気が早い」と笑う。
問4
正解は 4。
尚侍のおとどの演奏が、その場の状況や宮の体調にどのような超自然的な影響を与えたかに着目。
問5
正解は 5。
帝の言葉を通じて、尚侍のおとどの技量が仲忠の演奏以上に賞賛されているという評価を読み取る。
第5問 出典『松陰快談』長野豊山

江戸時代の儒学者である長野豊山(ながの ほうざん)によって書かれた全4巻の随筆集
『松陰快談』のあらすじ
『松陰快談』は、詩の価値を流派や形式で決めつける風潮を批判し、作品そのものの出来や風情を重んじるべきだと説いた、詩論的随筆である。長野豊山は肥前国(現在の長崎県)出身の儒学者で、当時の日本の知識人が公用語として用いていた漢文を使ってこの著作を執筆。
出題箇所
要約 この文章は、唐詩か宋詩かという二分法に固執する詩壇の姿勢を批判し、流派への帰属ではなく、詩そのものの出来や風情を基準に評価すべきだと説いている。
今回出題されている部分は、
- 詩壇における
「唐詩か、宋詩か」という二分法 - それに固執する人々の見識の狭さ
を、比喩と対話形式で批判する場面。
※作品全体の中でも、主張が最も明確に表れている核心部分。
問題提起(詩壇の二元論)
- 当時の詩壇では、
- 唐詩派
- 宋詩派
のどちらかに属することが重視されていた。
- 詩の評価が、
流派への帰属で決まってしまう状況が示される。
部分否定の読み取り
- 「不必(必ずしも〜ではない)」という表現で、
- 唐詩を全面否定しない
- 宋詩を全面否定しない姿勢が示される。
- どちらか一方に偏ること自体が問題だとする立場。
※中庸的・柔軟な姿勢の明示
原因の指摘
- 人々が偏った評価をするのは、見識が狭いからである。
- その「狭見」が、誤った判断をさせている。
反語によって主張を強調
- 「不亦……乎(なんと~ではないか)」という詠嘆を用いて、詩そのものを見るべきだという主張を強く印象づける。
比喩による論破
- 相手に「あなたの詩を見せてほしい」と迫る。
- 価値の低い本物(瓦)と、価値の高いもの(玉)を対比する比喩で、形式や見かけに惑わされる姿勢を皮肉る。
結論
- 流派や党派ではなく、
- 詩の内容
- 風情(韻致)
を基準に評価すべきだとまとめる。
ポイント
- ❌ 唐詩派・宋詩派の優劣論だと読む
- ❌ 作者がどちらか一方を支持していると決めつける
- ⭕ 「偏ること」自体への批判
- ⭕ 評価基準の転換が主題
問1
ア 4(主要な見解) イ 1(言葉の真意を知る)
問2
正解は 3。
「不必」は部分否定。一方に偏らず、かつ全否定もしない「中道」の姿勢。
問3
正解は 2。
使役の助動詞「使(しむ)」の語順に注意する。「(人々が偏った評価をするのは、見識が狭いからである。)その「狭見」が、誤った判断をさせている。」←「狭見(見識の狭さ)」が「然らしむ」(そうさせている)に気づけば良い。
問4
正解は 3。
「不亦…乎(また…ならずや)」。「なんと〜ではないか」という詠嘆。
問5
正解は 1。
批判者に対し、まず「あなたの詩を見せてくれ(請観其詩)」と迫り、反論の土俵に引き込む。
問6
正解は 2。
相手が「白石たちの詩は偽物だ」と言うのに対し、「本物だが価値の低い瓦」と「偽物に見えるが価値の高い玉(二子の詩)」を対比させ、皮肉を込めて論破。
問7
正解は 2。
資料と本文を統合。特定の流派(党派)に属することよりも、詩そのものの品格や風情(韻致)を重視すべきだという豊山の主張を捉える。
受験生の皆さんの日頃の努力が実ることを祈っています。



