真の自立とは

鷲田清一

哲学者・評論家・大阪大学名誉教授・京都市立芸術大学名誉教授

《語句》

 第一段落…一元的 大老 負い目 元服 成員 烙印 自分探し 

 第二段落…非依存 やけっぱち 相互依存 黒子 縁の下の力持ち

要約のヒント

【Ⅰ】(この文章は、現代社会の価値観や生き方に対する深い洞察を提供している。)

  • 現代社会における「できる」「できない」による評価の問題点と、それが人々の自己認識や生きる意味に与える影響について述べている。
  • 特に、年齢や能力の衰えが「できない」こととしてマイナス評価され、それが高齢者の自己否定や苦悩を生むこと、また、若者が社会的な「成人」になるまでの長い期間と複雑なプロセスが彼らの不安を増大させていることを指摘している。
  • そして、自分だけが持つ特別な才能や能力を見つけ出そうとする「自分探し」の限界を説き、その代わりに「できる」「できない」から生きる意味を見つけ出そうとする考え方そのものを変えるべきだと提案している。

【Ⅱ】

  • 自立とは自分のことはできる限り自分でするが、助けが必要になったときに電話をかける相手がいる状態であると定義している。これは独立とは異なり、他者との相互依存を前提とした状態である。
  • 筆者はリーダー論がこれほど読まれるのは、多くの人がリーダーになりたいのか、あるいはリーダーにならなければいけないと思っているからではないかと疑問を呈する。そして、誰もがリーダーになりたがる社会ほどもろい社会はないという考えを示す。
  • 肝心なのはリーダーではなくフォロワーたちであり、リーダーシップではなくフォロワーシップであると主張する。賢いフォロワーは、リーダーを見ており、リーダーの視点に立ち、リーダーの誤りを指摘したり、助言したりすることができる。
  • 社会を変えていくのも守っていくのも、助け合って生きていくのも、フォロワーの賢さと行動が鍵となると述べ、真の自立を身につけていくことが重要であると結論づけている。
  • 生きていく意味とは、自立した個人が相互依存することによって得られると考えられる。自立とは、自分のことはできる限り( A )でするが、助けが必要になったときに( B )人がいる状態で、相互依存とは、お互いに助け合う関係だ。
  • 自立した個人が相互依存することによって、社会はより強く、より豊かになる。また、個人は生きていく意味を見出し、より充実した人生を送ることができる。
  • 自立とは、独立ではなく、相互依存を前提とした状態である。
  • リーダー論は、誰もがリーダーになりたがる社会ほどもろい社会を招く。
  • 肝心なのはリーダーではなくフォロワーであり、賢いフォロワーシップが重要である。
  • 生きていく意味とは、自立した個人が相互依存することによって得られる。

【A 自分 B 助けてくれる】

生徒たちの要約

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問題(1)

鷲田清一は、自立とは「独立」と混同されていると指摘しています。独立と自立の違いを、鷲田清一の考えに基づいて説明してください。

問題(2)

鷲田清一は、リーダー論が無意味であると主張しています。リーダー論が無意味である理由を、鷲田清一の考えに基づいて説明してください。

問題(3)

鷲田清一は、生きていく意味とは、自立した個人が相互依存することによって得られると考えられます。生きていく意味とは、どのようなものであると言えるでしょうか。

(1)解答例

独立とは、「dependence(依存)」に否定の「in」を付加した語で、直訳すれば「非依存」となります。しかし、本当に「独立=非依存」な人などありえない。私が今仕事をできるのは、食べ物を生産する人やそれを運ぶ人、洋服を作る人がいるからです。食べ物を作れるのは、畑に水路を通す技術者やトラクターを開発する人が存在するからです。また、頑張って働いていけるのは、自分を頼ってくれる人がいるためでもあります。やけっぱちで帰宅しても、赤ん坊の寝顔を見て「また頑張ろう。」という気持ちをもらうことがあるでしょう。そうしたことも一切含めて、私たちの生活は、無限の相互依存(interdependence)で成り立っています。

このように、私たちは常に他者との相互依存によって支えられています。したがって、自立とは、独立ではなく、相互依存を前提とした状態であると言えます。

(2)解答例

リーダー論が無意味である理由は、以下の通りです。

  • 誰もがリーダーになりたがる社会ほどもろい社会はないという考えを示します。集団にはリーダーが存在するものですが、脇役も黒子も縁の下の力持ちもいる。いざというときに強いしっかりした社会とは、リーダーを含むさまざまな役割を交代で務められる社会です。そこでは誰もが、主にも従にもなっていきます。
  • 肝心なのはリーダーではなくフォロワーたちであり、リーダーシップではなくフォロワーシップなのです。賢いフォロワーが常にリーダーを見ており、「今ちょっとむきになりすぎじゃないか?」「ここを見落としているか、見えていないのではないか?」「疲れているのではないか?」と思いやっている。これは極めて自立的です。一般的には、リーダーが全体を見て、フォロワーは上司の言うことに従うものと考えられがちですが、それではいけない。当然、フォロワーは何も考えなくてよいという考えも間違いです。自立したフォロワーがしなやかにいつも全体を見ていること、すなわち「賢いフォロワーシップ」が実は重要なのです。
  • リーダー論が強調されると、誰もがリーダーになりたいと考えるようになる可能性があります。しかし、誰もがリーダーになれる社会は、誰もがリーダーを失う社会でもあります。したがって、リーダー論が強調されることは、社会の安定を脅かすことになるのです。

(3)解答例

生きていく意味とは、個人が生きる目的や価値を見出すことであると言えます。自立した個人が相互依存することによって、個人は他者から助けを得られるようになります。そして、他者から助けを得ることで、個人は自分の存在意義や価値を再確認することができます。

このように、自立した個人が相互依存することによって、個人は生きていく意味を見出し、より充実した人生を送ることができると言えます。

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