「文化」としての科学

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池内了とは？

要約一覧表

段落	要　　　　　約
1	文化と文明の定義について。西洋では精神的生活を「文化」、物質的所産を「文明」と呼ぶ。科学は文化の中核、技術は文明の基礎を成す。
2	文化は多様性・多重性を持つのに対し、文明は段階的に質が変化する。科学と技術は本来別物であり、科学は文化として、技術は文明の手段として役立つ。
3	文化としての科学は物質的生活には直接役立たないが、芸術作品と同様に精神世界を健全に生きるうえで不可欠である。宇宙創成や生命進化の探究がその例。
4	科学を文化として成り立たせるのは、見返りを求めないが人々の支えが必要という特徴。科学者と市民の間に暗黙の社会的契約が存在する。
5	文化の合意の原点は、自然の真理を探る営みの重要性にある。科学者は市民の負託に応え、市民はその成果を享受する関係。天文学を例に説明。
6	科学は趣味と類似するが、決定的な違いは科学の所産が世界観・自然観に影響し、社会に大きな影響を与えること。科学者には社会的受容への努力義務がある。
7	現代では科学の内実が変質し、技術との結びつきが強まった「科学の技術化」が進行している。
8	科学の技術化の理由の一つは、科学の専門化・特殊化により大きなパラダイム変換が滞っていること。過去の科学革命（相対論、量子論等）以後は通常科学の域を脱していない。
9	超伝導現象を例に、科学の発見が時代とともに実用技術と結びつく過程を説明。新理論が見つからない時代では応用を意図した研究が必要になる。
10	ナノテクノロジーやマイクロマシンなど、基礎科学でありながら直ちに技術と結びつく分野の活発化。科学と技術が重なり合う領域での研究の重要性。
11	科学の技術化は必然の方向であり、科学者も実用性を意識するようになった。これが「産学連携」による「知の私物化」の背景となっている。
12	科学の技術化における問題は、「技術的合理性」と「経済的合理性」の対立。本来は環境倫理や安全性を重視すべきだが、企業論理が優先される現実。
13	科学者が企業論理に従うことへの危惧。医学者と製薬メーカーの癒着、薬害問題での責任回避を例に挙げ、科学者の傲慢さと無責任さを批判。
14	地震災害における工学者の発言を例に、科学と技術の違いを理解していない問題を指摘。技術は現実との「妥協」の上に成立していることの認識不足。
15	原発事故を例に、技術の限界を市民に説明しない科学者の問題を指摘。「想定外」として責任回避する姿勢への批判。
16	結論として、科学者は科学と技術の相違を見極め、技術的合理性の限界を常に社会に伝える責務があることを強調。技術化の危うさを自戒すべきと提言。