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- ⑧「Kの唇は例のように少し震えていました。」について、この時、私はKをどのように見ていることが分かるか?
- ⑨「私はまたはっと思わせられました。」のはなぜか?

- ⑱「本人が不承知のところへ、私があの子をやるはずがありませんから。」という奧さんの言葉からどのようなことが読み取れるか?
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夏目漱石「こころ」学習評価ルーブリック
評価観点と評価基準
| 観点 | 十分満足できる(A)3点 | おおむね満足できる(B)2点 | 努力を要する(C)1点 |
|---|---|---|---|
| 観点1:知識・技能 | 「こころ」の語彙、表現技法、文学史的背景を正確に理解し、表現や心理描写の技法を適切に解釈できる。明治時代の言語表現や文体的特徴を十分に把握している。 | 「こころ」の基本的な語彙、表現を理解し、主要な文学的技法や時代背景について説明できる。表現もある程度理解している。 | 「こころ」の基本的な語彙や表現の理解が不十分で、文学的技法や時代背景の理解が浅い。 |
| 観点2:思考・判断・表現 | 作品の人物関係、心理描写、主題を多角的に分析し、自分の解釈を表現できる。特にKの自殺の理由を考察し、先生とKの関係、エゴイズムと道徳の葛藤などを深く論じることができる。 | 作品の主要な要素を分析し、自分なりの解釈を持って表現できる。Kの自殺の理由についてある程度考察し、人物の心理や作品の主題について根拠を示して説明できる。 | 作品の内容理解はあるが、Kの自殺の理由への考察が浅く、分析や解釈が表面的で、自分の考えを論理的に表現することが困難。 |
| 観点3:主体的に学習に取り組む態度 | 「こころ」の学習に積極的に取り組み、作品世界に深く関わろうとする意欲を示している。他者の解釈と比較検討し、自分の読みを深めようとする姿勢がある。 | 「こころ」の学習に真面目に取り組み、作品を理解しようとする意欲を示している。授業や課題に積極的に参加している。 | 「こころ」の学習への取り組みが受動的で、作品への関心や理解を深めようとする意欲が不足している。 |
総合評価基準
- 9点(A): 「こころ」を深く理解し、文学的価値を多角的に論じることができる
- 6点(B): 「こころ」の主要な要素を理解し、ある程度の分析・表現ができる
- 3点(C): 「こころ」の基本的な内容理解にとどまっている
各観点の評価ポイント
観点1:知識・技能
- 語彙・文法・表現技法の理解度
- 文学史的背景知識
- 古典的表現の読解力
- 心理描写の技法理解
観点2:思考・判断・表現
- 作品分析力
- Kの自殺の理由に関する考察力
- 論理的思考力
- 表現力・論述力
- 創造的解釈力
観点3:主体的に学習に取り組む態度
- 学習意欲・関心
- 主体的な読書姿勢
- 協働的学習への参加
- 文学的価値の追求意欲
「こころ」のテーマは何か?


先生、学校で冬休みの宿題が出て「こころ」を読んだんです!今、課題が出てレポート書かなきゃならないんです。どう書けばいいですか?

「こころ」は詳しく読みましたか? なぜKは自殺したか先生に習いましたか?

冬に「上・中・下巻」を読みました。学校の先生は「なぜ自殺したと思うか、考えてね♪」って言いました!

「こころ」全巻読んだんですね?それはすごい!なるほど、そうなんですね。

先生、私はレポートでいい点数をとりたいんです!でも、どう書いてもいい点数取れると思えません…

分かりました。ちょっと考えてみましょう!

はーい!
Kはなぜ死んだのか?



夏目漱石作「こころ」をできるだけ忠実に再現している市川崑監督の映画「こころ」の中に「K」と「私」が房州へ旅行に行く場面があります。道ばたで日蓮宗の僧侶にKは声を掛けます。
「貴僧は日蓮についてどうお考えです?」
「K」の問いかけに僧侶は満足する答えをしません。
「日蓮は書が達者で…」
「K」は苛立ちます。
「くだらん、私はそんな話をしてるのではない!」
ちなみに小湊は日蓮の生まれ故郷です。「K」は真宗寺に生まれましたが彼は生家の宗旨にそぐわない人物でした。彼は医者になると約束しながら養家の意志に背いて大学へ通いました。それがバレて彼は実家からも勘当され天涯孤独の身となり神経衰弱(精神疾患)に陥ります。
「私」は「K」に同情し自分の下宿に住まわせて欲しいと「奥さん」にお願いします。「お嬢さん」と「私」はすでにとても仲が良く「奥さん」も「私」と結婚させたいと密かに思っていました。そんな所へ突然、「K」が出現したわけです。
「奥さん」はしぶしぶ「K」を下宿に受け入れます。神経衰弱で人間不信に陥った「K」にお嬢さんは明るく接します。お嬢さんは天真爛漫で物怖じしない性格でいつも「私」をハラハラさせます。「私」は「お嬢さん」が好きだったので「K」と仲良くするのを見て嫉妬心を起こしたりしました。
ある日、突然「私」は「K」からお嬢さんに対する思いを打ち明けられます。「K」は普段から道のためには全てを犠牲にすべきと「私」に語っていたので「私」はまったく予想外の出来事に動揺します。「K」の気持ちを「お嬢さん」から引き離そうと「精神的に向上心のないものはバカだ」と言いました。「私」は房州旅行をしたときに「K」から言われた言葉をそのまま使って「K」の反応を待ちました。

これって三角関係ですよね?たしか「K」は「道のためなら全てを犠牲にすべき」って言ってませんでしたっけ?

そうですね。だから、Kが女性には全く興味ないと「私」は思っていたんです。「全てを犠牲にする」というのは日蓮宗の教えを忠実に実践するために、あらゆる欲を捨てて修行に励むという意味だと思います。

それってすごい!!日蓮宗って日本史で「鎌倉新仏教」って習いました!「南無妙法蓮華経」って唱えれば極楽へ行けるって!

よく覚えていますね!!日蓮宗に傾倒していた「K」は摂欲とか禁欲という言葉が好きでした。非常にストイックな人だったんですね。特に嘘は嫌いでした。

でも、「お嬢さん」を好きになってしまったんですよね?優しくされたからかなあ笑

いい所に気づきましたね!!「K」は恋(女性)に対する免疫が全くなかったんでしょう。きっと「恋」をして一番動揺してるのは「K」自身でしょうね。

わたしも気がついたら好きになってた人がいます笑笑

そうでしょう?誰にでもあると思います。たぶん、「K」は初めて恋をしたんですね。「K」ってとても純粋な人です。そして、素直に自分の気持ちを唯一信頼できる「私」に話してしまったんです。結果的にそれが悲劇を生むんです。

悲劇?それってつまり、「私」が「K」に内緒で「お嬢さん」と婚約したから、「K」がショックで自殺するってことですか?

う~ん、本当にそうでしょうか?「K」は失恋のショックで死んだんじゃありません。もう少し考えてみましょう。
彼はいつも話す通りすこぶる強情な男でしたけれども、一方ではまた人一倍の正直者でしたから、自分の矛盾などをひどく非難される場合には、決して平気でいられない質だったのです。私は彼の様子を見てようやく安心しました。すると彼は卒然「覚悟?」と聞きました。
そうして私がまだ何とも答えない先に「覚悟、―覚悟ならない事もない」と付け加えました。
彼の調子は独言のようでした。また夢の中の言葉のようでした。

先生、この覚悟ってどんな意味かよく分からなかったんです。

「覚悟」って何か決心をしたってことでしょう?「K」は何を決心したんでしょうね?

ん~、「私」は安心したって書いてあるから「K」がお嬢さんを諦める決心したってことかな?それにしても、「覚悟ならない事もない」って、なんか気持ち悪い言い方ですね。

ここで「私」は「K」がお嬢さんとの恋に突き進むと勘違いしたんです。「K」の「覚悟」とは究極的には命を絶つ「覚悟」でしょうね。不気味な感じを受けるのは当然です。 鋭い感覚ですよ!

え?ここでもう「自殺」を考えてるんですか!「私」の勘違いって、「K」が「私」に隠れてお嬢さんに告白するって思ったんですね?

そうです。「Kは人一倍の正直者でしたから、自分の矛盾などをひどく非難される場合には、決して平気でいられない質だった」ってあるでしょう…この「K」の矛盾って何でしょう?「K」は道のためには全てを犠牲にするんです。「精神的に向上心のないものはバカだ」って「私」に言ってますね。でも、彼は「お嬢さん」に対する恋のせいで道を忘れてしまったんです。

確かに自分の言ってることと矛盾してるわ。じゃあ、「私」は「K」のその矛盾を非難して「お嬢さん」をあきらめさせようとしたってことかな…でも、「K」はどこの場面で自殺を決心したんだろう?
奥さんのいうところを総合して考えてみると、Kはこの最後の打撃を、最も落ち付いた驚きをもって迎えたらしいのです。
Kはお嬢さんと私との間に結ばれた新しい関係について、最初はそうですかとただ一口いっただけだったそうです。しかし奥さんが、「あなたも喜んで下さい」と述べた時、彼ははじめて奥さんの顔を見て微笑を洩らしながら、「おめでとうございます」といったまま席を立ったそうです。
そうして茶の間の障子を開ける前に、また奥さんを振り返って、「結婚はいつですか」と聞いたそうです。それから「何かお祝いを上げたいが、私は金がないから上げる事ができません」といったそうです。奥さんの前に坐っていた私は、その話を聞いて胸が塞るような苦しさを覚えました。

ここは「私」が「奥さん」に詰め寄って「お嬢さん」との婚約を決めたあと「奥さん」から「K」にもう話したのか?と聞かれた直後の場面です。「お嬢さん」との新しい関係(婚約)についてすでに「K」は知っていたと知らされ「私」は驚きます。

「私」が「K」に「お嬢さん」とのことを話す前に「K」は知っちゃったんですね…でも、「K」は「私」に何も言わなかった…「胸が塞るような苦しさを覚えました」というところが印象的です。

この時、「K」はどんな気分だったんでしょうね?

「最初はそうですかとただ一口いっただけだったそうです」のあとに、「おめでとうございます」といったまま席を立った…そして、「結婚はいつですか」と聞いた…そして「何かお祝いを上げたいが、私は金がないから上げる事ができません」といった…ん~、私にはよく分からないです。

「K」はただ、純粋で正直で素直な人なんです。日蓮宗の教えは自分よりも他人のために尽くすという精神が色濃く出てるものだと思います。でも、「K」はそこを忘れ、自分の道も忘れて「お嬢さん」を好きになった。結果的に「私」を困らせてしまった訳です。「私」は「K」の生活の全てを支えていました。そんな「私」を困らせてしまったと「奥さん」から聞いた「K」の気持ちはどうでしょう?もう一度考えてみてください。

はい。「K」は思い込んだら突き進む人で…純粋で…嘘が嫌いで…日蓮宗…そう考えると、私なら自分を責めます泣 なんで「お嬢さん」を好きになったんだろう?って…



そうそう、多分そうですね。そして何より自分の存在を恨みます。なぜ、自分はこの世に生まれてきたんだろう?ってなりますね。
手紙の内容は簡単でした。そうしてむしろ抽象的でした。自分は薄志弱行でとうてい行く先の望みがないから、自殺するというだけなのです。(中略)しかし、私の最も痛切に感じたのは、最後に墨のあまりで書き添えたらしく見える、もっと早く死ぬべきだったのになぜ今まで生きていたのだろうという意味の文句でした。

これは「K」の遺書ですね?最初は全然分からなかったんです。でも、今なら何となく分かる気がします。

「もっと早く死ぬべきだったのになぜ今まで生きていたのだろう」という部分には「私」に迷惑掛けてゴメンネっていう「K」の気持ちが込められてる気がします。

なんか、レポート書けそうな気分になってきました笑笑
探究的な考察

さやか:「ねえ、ふうか。『こころ』を読んでどう思った?」
ふうか:「う~ん、なんか深い作品だったわ。」
さやか:「そうよね。実はこの作品は漱石自身の体験や観察から生まれたんだって。元ネタがあるわけではないんだってさ。」
ふうか:「ホントに?それはめっちゃ面白いね。でも、作品の背景やテーマには漱石自身の生活や時代背景が大きく影響しているんだよね?」
さやか:「そうそう…例えば、『こころ』は明治45年(大正元年)の明治天皇崩御とそれに続く乃木希典陸軍大将の殉死に強い衝撃を受けた漱石が書き上げた作品なんだって。時代の変化によって、批判されるだろう「明治の精神」への思いを込めているんだって。」
ふうか:「へー、それすごいね。でも、漱石が若い頃に下宿していた尼寺で、和歌や日本画にも優れた作家の「大塚楠緒子」という女性と相思相愛だったという体験が、彼の作品に影響を与えているって聞いたことあるよ。」
さやか:「そうなんだ?!それは知らなかった。でも、そういう視点から『こころ』を読むことで、作品の背後にある深い意味やメッセージを理解することができるかもね。」
文学作品は、作者の体験や観察、そして時代背景が大きく影響しています。それを理解することで、作品の深い意味を探求することができます。




テスト対策
語句の確認


テスト対策動画はその1~その3まであります。必要なところを選んで見てください。
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解 答


② 「なにしろ一つの塊でした」とはどういうことか? 驚きと恐怖で体が固まってしまい、まるで石や鉄のように動けなくなった状態を表す。(「私」がKの告白を聞いたときの驚きとショックを表す。)
③ 「先を越された」を分かりやすく説明せよ。 「私」は自分がお嬢さんへの恋の告白をする前にKに先を越されてしまったと感じた。(Kが「私」よりも先にお嬢さんへの恋心を告白した。)
⑤ 「この不自然」とはどういうことか? Kの自白が終わった後に自分の気持ちを話すのは不自然だということ。(私がKの自白に対して自分の気持ちを打ち明けるタイミングを逃してしまい、その不自然さにどう対処すればいいのかわからないという状況。)
⑦「午前に失ったもの」とは何か? 「午前に失ったもの」とは、自分の気持ちをKに打ち明ける機会を指す。主人公である「先生」は、Kが自分の気持ちを告白した際に、動揺して自分の気持ちを伝えることができず、後悔と悔恨の念に駆られ、再びその機会を得ることを望んでいる。
⑨「私はまたはっと思わせられました。」のはなぜか? 「そうだなあ」とKが低い声で渋って答えたことが普段と違っていたから。(Kが普段とは違う反応を見せたため、主人公はその変化に気づき、驚きを感じた。Kの態度や言葉の変化が、主人公にとって予想外だったということ。)
⑪「思ったとおりを話してくれと頼」んだのはなぜか? 語り手がKの本心を知りたかったから。(Kの態度や行動が曖昧で、語り手はその真意を確かめるために、Kに対して率直に自分の考えを話してほしいと頼んだ。これにより、語り手はKの本当の気持ちや意図を理解し、自分の行動を決めるための情報を得ようとした。)
- 精進と禁欲: Kは昔から「精進」という言葉を好んで使っており、この言葉には禁欲的な意味も含まれ、自己を律し、欲望を抑えることを意味する。
- 道のための犠牲: Kの第一信条は「道のためにはすべてを犠牲にすべきものだ」というもの。この信条から、Kは自身の欲望や恋愛も道の妨げになると考えていた。
- 精神的向上心: Kは、精神的な向上心を持ち、それを追求することを重要視していた。したがって、精神的に向上心のない者を「ばかだ」として否定的に捉えていた。
- これらがKの「平生の主張」であり、彼はこれに基づいて自己を律しようとしていたが、この強い信念にもかかわらず、恋愛の感情に悩む自分を恥じ、迷っていた。
- 良心:Kに対する罪悪感や申し訳なさを抱き、謝りたいという純粋な気持ち。
- (正直な感情: 友人としての素直な感情や思い。)
- 「私」はKに対して正直に向き合わず、謝罪するべき場面で謝罪しなかったり、奥さんに嘘をついたりした。
- 「私」は自分の利害や立場を守るために行動しており、他人の感情や立場を顧みない姿勢を見せた。特に、Kとの関係において自己中心的な行動が目立った。
- 「私」は自分の弱点や過ちを隠そうとし、他人に対して正直でない態度を取った。
- 自己保身:Kの手紙を読んだとき、「私」はまず自分が軽蔑されることを恐れ、手紙の内容が他人に知られることを心配した。(自分の世間体や評判を守ることを最優先に考えている。)
- 罪悪感の回避:Kの死に対する責任や罪悪感を感じながらも、「私」はその感情を直視せず、自己弁護を試みる。(Kの死に対して真摯に向き合うことを避け、自分の行動を正当化しようとした。)
- 自己中心的な視点:Kの死という悲劇的な出来事に対しても、「私」は自分の感情や立場を最優先に考えた。(Kの苦しみや悲しみよりも、自分がどう見られるか、自分がどう感じるかに気を取られた。)
動画:Vidnoz AI 音声:Vidnoz AI音声読み上げ


















