徒然草【第百二十二段】

朗   読

本   文

 人の才能は、ふみ あきらかにして、ひじりの教えを知れを第一とす。次には書く事、むねとする事はなくとも、これを習ふ aべし。学問に便あらためなり。次に医術を習ふべし。身を養ひ、人を助け、忠孝つとめも、医にあらはある bべから 。次に弓射ゆみゐ、馬に乗る事、六芸りくげいいだ。必ずこれをうかがふべし。文・武・医の道、誠に、欠けてはあるべから 。これを学ばをば、いたづらなる人といふべから 。次に、食は人の なり。よく味はひをととのへ知れ人、大きなる徳とすべし。次に細工よろづ 多し。

 この外の事ども、多能は君子の恥づる処なり詩歌しいかにたくみに、糸竹しちくたへなる幽玄の道、君臣これを重くすといへども、今の世にはこれをもちて世を治むる事、やうやおろかなるに似たりcこがねはすぐれたれども、くろがねやく多きにしかざるごとし。」

【参考】徒然草現代語訳つき朗読

本文中の助動詞

」「」「なり」「たり」「べし」「む(ん)

ごとし

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問題(べし)

問一 傍線部の助動詞の文法的意味と活用形を答えよ。

問二 以下の傍線部の「べし」のうち、「意志」となるものを記号で答えよ。

   (1)この一矢(ひとや)に定むべし。 

   (2)さりぬべき折をも見て、対面すべくたばかれ。 

   (3)ほととぎす鳴くべき時に近づきにけり。

   (4)家の作りやうは、夏をむねとすべし

問三 以下の( )に入る「べし」を適当に活用させて答えよ。 

   (1)人は、形・有り様のすぐれたらんこそ、あらまほしかる(べし)。

   (2)子となり給ふ(べし)人なめり。

   (3)なほ、さりぬ(べし)む人の娘などは、差し交じはらせ…

   (4)そのころ院の賭弓のりゆみあ(べし)。

問四 c「金は~しかざるがごとし」について、「金」「鉄」がそれぞれ何の道の例えとなっているか明らかにして、この部分を口語訳せよ。

模 範 解 答

問一 a 当然 終止形 b 可能 未然形

問二 (1)

問三 (1)べけれ (2)べき (3)べから (4)べし

問四  金(幽玄の道)は鉄(文・武・医の道)よりも優れているが、鉄の用途の多いのに及ばないのと同じだ。

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