漢文 実践編 センター過去問

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答えの見つけ方を分かりやすく図示

 張荷宇は生後十ヶ月で母親を亡くした。物心がつく段階に至って、いつも母のことを思い続けてやむことがなく、時が経てば経つほど、その母を恋い慕う気持ちはますます強くなった。彼は、自分が一日たりとも母に仕えることができないことを悲しんだ。母の言葉や振る舞いもまた、知ることができないことを嘆いた。

 荷宇は香河(北の方)の人であった。以前、(故郷を離れて)南の地を訪れ、(故郷へ)戻るにあたり、銭唐に着いた。母が自分の目の前にやってくるという夢を見、夢の中ですぐにその人が母であることを悟った。すぐに目覚め、そこで、慟哭しながら言ったことは「あなたは本当に私の母である。母よ、どうして今日になって、私に会ってくださったのですか。母よ、しかも何で私のもとからすぐ去ってしまったのですか。母よ、私にあなたの姿を続けて見られるようにさせてくれるでしょうか。(いや、それはかなわないだろう)。」

 このときに、夢で見た母の姿に基づいて、張荷宇は、母の絵を描いた。この母の姿の絵に関しては、私(蘆文弨)は見ていない。今、彼が私のところに持ってきた図は、私が見たところ、彼が母を夢見ている状況を書いているだけだ。

 私はそこで、張荷宇に対して語ったことには、「そもそも、人のまことの気持ちには、生と死の隔てがないというのは信じることのできる道理で、道理のゆがめられた話ではない。まして、子どもが親に対して抱く気持ちと言ったら、親の息遣いまでも通じて分かるほどで、そもそも両者を隔てるものがあるということは無い。」