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参 考
[漢文] 漢文入門 漢文に親しむ第20回 ●訓読の基本 (1) 訓読
矛盾『韓非子』
【白 文】
矛盾 『韓非子』
楚人有鬻盾与矛者。誉之曰、「吾盾之堅、莫能陥也。」又誉其矛曰、「吾矛之利、於物無不陥也。」或曰、「以子之矛、陥子之盾、何如。」其人弗能応也。
【書き下し文】
楚人に盾と矛とを鬻ぐ者有り。之を誉めて曰はく、「吾が盾の堅きこと、能く陥すもの莫きなり。」と。又其の矛を誉めて曰はく、「吾が矛の利きこと、物に於いて陥さざること無きなり。」と。或ひと曰はく、「子の矛を以つて、子の盾を陥さば、何如。」と。其の人応ふる能はざるなり。
【口 語 訳】
楚の国の人に、盾(楯)と矛を売っている人がいた。(その人が)自分の盾(楯)をほめそやして言うことには、「私の(売る)盾(楯)の堅いことといったら、(これを)突き通すことのできるものはありません。」と。さらにまた、自分の矛をほめそやして言うことには、「私の(売る)矛の鋭いことといったら、どんなものでも突き通さないことはありません。」と。(それを聞いていた)ある人が言うことには、「あなたの矛で、あなたの盾を突き通したら、どうなりますか。」と。その盾(楯)と矛を売っていた人は返答することができなかった。
助長『孟子』
【白 文】
助長 『孟子』
宋人有閔其苗之不長而揠之者。芒芒然帰、謂其人曰、「今日病矣。予助
苗長矣。」其子趨而往視之、苗則槁矣。天下之不助苗長者、寡矣。
【書き下し文】
宋人に其の苗の長ぜざるを閔へて之を揠く者有り。芒芒然として帰り、其の人に謂ひて曰はく、「今日病れたり。予苗を助けて長ぜしむ。」と。其の子趨りて往きて之を視れば、苗は則ち槁れたり。天下の苗を助けて長ぜしめざる者、寡なし。
【口 語 訳】
宋の国の人で、自分の苗がなかなか生長しないのを心配して、(全ての)苗を引っ張っ(て引き伸ばし)た人がいた。(その人はすっかり)疲れて、ぼんやりとして帰宅し、家の者に言ったことには、「今日は疲れたよ。私は苗を助けて生長させてやったんだ。」と。その人の子どもが走って行って苗を見てみると、苗はといえば、(全て)枯れてしまっていた。
世の人々で、苗を助けて生長させる(ために無理に引っ張るといった余計な)ことをしないような者は、少ないものだ。(世の中には、助けようとして手を加えて、かえって害を及ぼす人が多いのだ。)
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推敲『唐詩紀事』
【白 文】
推敲 『唐詩紀事』
賈島赴挙至京。騎驢賦詩、得「僧推月下門」之句。欲改推作敲。引手作推敲之勢、未決。不覚、衝大尹韓愈。乃具言。愈曰、「敲字佳矣。」遂並轡論詩久之。
【書き下し文】
賈島挙に赴きて京に至る。驢に騎りて詩を賦し、「僧は推す月下の門」の句を得たり。推を改めて敲と作さんと欲す。手を引きて推敲の勢を作すも、未だ決せず。覚えず、大尹 韓愈に衝たる。乃ち具に言ふ。愈曰はく、「敲の字佳し。」と。遂に轡を並べて詩を論ずること之を久しくす。
【口 語 訳】
賈島が科挙を受けるために(唐の)都の長安にやってきた。驢馬に乗りながら詩を作り、「僧は推す月下の門」という句ができた。(更に考えているうちに)「推」の字を改めて「敲」の字にしようとした。手を動かして推したり、敲いたりするしぐさをしてみたが、まだ決まらなかった。(あまりに熱心に考えていたので)うっかりして、長安の行政長官である韓愈(の行列)に突き当たってしまった。そこで詳しく(事情を)話した。韓愈は(即座に)言った、「敲の字が良い。」と。(二人は意気投合し)そのままいっしょに乗り物を進めながら、長いこと詩を論じ合った。
辞書的な意味
【矛 盾】とは?
前に言ったこととあとに言ったこととが一致しないこと。一般に、理屈として二つの事柄のつじつまが合わないこと。 「―撞着(どうちゃく)」
【助 長】とは?
力を添えて、ある物事の清澄や発展を助けること。また、ある傾向をより著しくさせること。「国際交流を―する」「不安を―する」
《苗を早く清澄させようと思った宋の人が苗を引き抜いて枯らしてしまったという「孟子」公孫丑上の故事から》不必要な力添えをして、かえって害すること。
【推 敲】とは?
《唐の賈島 (かとう) が、「僧は推す月下の門」という自作の詩句について、「推す」を「敲 (たた) く」とすべきかどうか思い迷ったすえ、韓愈 (かんゆ) に問うて、「敲」の字に改めたという故事から》詩文の字句や文章を十分に吟味して練りなおすこと。「―を重ねる」「何度も―する」
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