「なむ」の識別 確認テスト付き

「なむ」の識別

 内裏わたりの旅寝すさまじかるべく、 気色ばめるあたりは そぞろ寒くや、と 思ひたまへられしかば、いかが思へると、気色も見がてら、雪をうち払ひつつ、なま人悪ろく爪喰はるれど、さりとも今宵日ごろの 恨みは解け(1)なむ、と 思うたまへしに、 火ほのかに壁に背け、萎えたる衣どもの厚肥えたる、大いなる籠にうち掛けて、 引き上ぐべきものの帷子などうち上げて、 今宵ばかりやと、待ちけるさまなり。 さればよと、 心おごりするに、正身はなし。 さるべき女房どもばかりとまりて、『 親の家に、この夜さりなむ渡りぬる』と答へはべり。(「源氏物語」帚木)

問)傍線部(1)「なむ」と同じ用法のものを、次の中から選べ。

ア.飽かなくにまだきも月の隠るるか山の端にげて入れずもあらなむ(古今集)

イ.さあらむ所に、一人往なむや。(大鏡

ウ.かく心苦しくて住まむよりは、都にては、とてもかくても過ぎなむ。(沙石集)

エ.駿河の国にあるなる山なむ、この都も近く、天も近くはべる。(竹取物語)

オ.はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、(伊勢物語)

正解は「ウ」です

アは「未然形+終助詞(願望)」、イは「ナ変・未然形+助動詞(推量)」

ウは「連用形+助動詞(強意)+助動詞(推量)」

エは「係助詞」、オは「未然形+終助詞(願望)」(「明け」はカ行下二段未然形)

【口語訳】

「内裏あたりでの宿直は興冷めで(気乗りがしない)、気取った女の家は何となく寒くないかと思いましたので、どう思っているのかと様子見がてら、雪をうち払いながら、何となく体裁が悪くきまりも悪く思われるが、そうは言っても今宵はここ数日の恨みも(1)きっと解けるだろうと思っていましたところ、灯(火)をほのかに壁に向けて柔らかな衣服で厚い衣服を大きな伏籠にうち掛けて引き上げておくべきの几帳の帷子などは引き上げてあり、今夜あたりは(私が来るだろう)と、待っていた様子です。やはりなと、得意になりましたが、(女)本人はいません。しかるべき女房連中だけが(そこに)いて『(女は)親御様の家に、今晩は行きました』と答えます。

【解説】

「雨夜の品定め」の場面、光源氏と頭中将の会話に二人の中流貴族、左馬頭(さまのかみ)と藤式部丞(ふじしきぶのじょう)が乱入してきて、男たちの話は女性の話で盛り上がっていきます。ここでは、左馬頭が嫉妬深い女(爪食う女)との思い出を語る場面です。


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