ファーストペンギンになる方法(茂木健一郎)

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「最初のペンギン」は、茂木健一郎氏によるエッセイで、人間の創造性と挑戦精神について考察しています。このエッセイでは、ペンギンが海に飛び込む際の行動を例に挙げています。ペンギンたちは海に飛び込む前に足踏みをしますが、これは海中に恐ろしい敵が潜んでいる可能性があるからです。しかし、飛び込まなければ餌を得られず、飢え死にしてしまう可能性もあります。このような不確実性の中で、最初に飛び込むペンギンがいることで、群れ全体の事態が切り開かれます。茂木氏は、この「最初のペンギン」の行動を、新しいことに挑戦する人々に例えています。不確実な状況下で勇気を持って決断する人々が、新しい可能性を切り開くという考え方です。また、も茂木氏は人間の創造性を「有限の立場」から考察しています。人間は全てを見通すことはできず、未知のものへの好奇心や直観によって新しいものを創造していくと述べています。このエッセイは、人間の創造性や挑戦精神、そして不確実性と向き合う勇気について深く考えるきっかけを提供してくれます。
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要 約
第一段落
人間は「有限の立場」にあり、全てを見通すことはできない。この有限性は創造性と深く結びついており、コンピューターも同様に「有限の立場」にあるが、その乗り越え方が人間とは異なる。
有限の立場:人間が事象の全てを見通すことはできず、常に限られた選択肢の中から選ぶ必要があるという意味
創造性:単なる閃きではなく、日々の経験や学び、そしてそれらを結びつける思考のプロセスから生まれるもの「幸運に出会う能力」と密接に関連。創造性を生み出すためには「集中とリラックス」のバランスが重要
第二段落
「神の視点」からは新しいものの創造はありえない。全てが見えていれば、「新しい」も「古い」もない。新しいものが生まれる可能性があるということは、未来が不透明で不確実なものであることを示している。
神の視点:自分自身を客観的に見ること、または高い視点から物事を捉えること
不確実(性):未来が予測できないこと(不確実性が人生における不安と希望の両方を生み出す)
第三段落
人間が置かれた状況は全ての生物が投げ込まれている条件でもある。生物の長い歴史は、どこに行けば食べ物があるのか確実には分からない状況での生存競争の歴史でもあった。
生存競争:一般的には生物学的な生き残りのこと(ここでは、自己のアイデンティティを見出し、社会の中で意味のある役割を果たすことにも関連している)
第四段落
創造することは、確実な前提条件から、既に確立したルールに従って論理的な演繹を積み重ねていくことでしかないとしたら、そこには何の新しいものも生みだされるはずはない。創造的な人間は、不確実な状況下で海に飛び込むという「決断」を下すペンギンと、生物の進化の歴史を通してつながっている。
演繹:より大きな一般的な原則から特定の結論を導き出すプロセス
(最初の)ペンギン:新しいことに挑戦する人々を称賛する概念
語句の確認
テスト対策
以下の「最初のペンギン」の問題を解きましょう。(解答は下へ)
- 「神の視点」から見た場合、新しいものの創造とはどのようなことだと述べているか。三十字以内で説明せよ。
- 「有限の立場」について、人間とコンピューターの違いを「不確実性」「感情」「演繹」という言葉を必ず使って説明せよ。
- ペンギンの生存戦略について、その背後にある自然界の厳しい条件を説明せよ。
- ⅰ「最初のペンギン(first penguin)」とは何を指すか、ⅱまた、その背景にある文化を説明せよ。
- 「未来が見渡せないままに不確実性の海に飛び込むというのは、創造性の発揮において、人間がまさに行っていることである。」この文の意味を分かりやすく説明せよ。
- 「未来感覚」が創造性をどのように支えるか、自分の言葉で説明せよ。
探究的な考察
イチカ:ねえナツミ、教科書のファースト(最初の)ペンギンってどう思う?なんかすごく考えさせられるんだけど。
ナツミ:「人間は有限の立場にある」か…。確かにそうだよね。全部見通せるわけじゃないし、未来のことなんて本当に分からないもん。
イチカ:そうそう!でさ、「この有限性が創造性と深く結びついている」ってとこが面白いと思ったんだ。もし全部最初から分かってたら、新しいものなんて生まれないって。
ナツミ:うんうん、それは私も納得できる。だって、ゴールが全部見えてるマラソンなんて、つまんないもんね。どこにたどり着くか分からないから、工夫したり、新しい走り方を試したりするんじゃないかな。
イチカ:だよね!人間って不確実な状況の中で、色んなものを生み出してきたんだよね。芸術とか、科学技術とか。失敗したり、回り道したりしながら。
ナツミ:でもさ、コンピューターも「有限の立場」にあって、その乗り越え方が人間とは違うってどういうことだろう?
イチカ:そこが私もよくわかんないんだよね。コンピューターもインプットされた情報やプログラムの範囲内でしか動けないっていう意味では有限だけど…。
ナツミ:うん。でも、人間みたいに「えいやっ!」って感じで、論理的な思考を飛び越えて新しいアイデアを生み出すことはできないんじゃないかな。コンピューターってあくまで出来上がってるデータを組み合わせて、効率的な解決策を見つけるのが得意なイメージ。
イチカ:「えいやっ」って…ナツミ、昭和生まれ?まあ、人間は感情とか、直感とか、まだ言葉にできないような感覚も創造性の源になるけど、コンピューターにはそれがない、みたいな感じ?
ナツミ:いやいや、令和だし。文章にもあったけど、「神の視点からは新しいものの創造はありえない」って、すごいとこ突いてる気がする。全てが確定している世界では、「新しい」っていう概念自体が存在しないんだもんね。
イチカ:うんうん。でさ、最後の「創造的な人間は、不確実な状況下で海に飛び込むという『決断』を下すペンギンと、生物の進化の歴史を通してつながっている」って部分、すごくドキッとしたんだ。
ナツミ:あー、私も!ペンギンが安全な陸を離れて、どこに食べ物があるか分からない海に飛び込む勇気ってすごいよね。それって、人間の新しいことに挑戦する時の不安と希望が入り混じった気持ちと似てる気がする。
イチカ:うん。私たちもこれから色んな選択をして、未来を切り開いていくけど、その過程ってまさに不確実な海に飛び込むようなものなのかも。成功するか失敗するか分からないけど、飛び込まないと何も始まらない。
ナツミ:この前さ、ある女性の国会議員さんが今の時代は学歴なんかで何も決まらないって話をしてた。今の自分に諦めず、何かに挑戦するって大事なんだね。生物だって大昔は食べ物を求めて新しい場所へ移動したり、環境の変化に対応するために進化したり。確実なことなんて何もない中で、生き残るために創造性を発揮してきたんだ。
イチカ:そう考えると、創造性って人間だけの特別な能力じゃなくて、生きてるものが持っている、生きるための力なのかもしれないね。コンピューターは効率化や分析は得意だけど、ゼロから何かを作り出すって意味での「創造」は、この不確実さの中で生まれるものなのかも。
ナツミ:うん、私もそう思う。コンピューターはあくまで道具で、完璧じゃない人間の「有限性」から生まれる問いや、まだ見ぬ何かを求める気持ちが、本当の「創造」につながるんじゃないかな。
イチカ:明日、三面なんだ…。将来、どうしたらいいか分からなかったけど、勇気出していろんなことにチャレンジしてみようかなって思った。
ナツミ:うん、私もそう思う。私も色んなことに興味を持って、不安はあるけど、私なりに自分の行きたいところが見つかるように進路を考えて行く。
1: 「神の視点」から見れば新しいものの創造はありえない。(全てがあらかじめ見えていれば、「新しい」も「古い」もない。)
2: 人間とコンピューターはどちらも「有限の立場」に置かれているが、その乗り越え方が違う。人間は不確実性を乗り越えるための感情のシステムを通じて直観を支えるが、コンピューターは定まったルールに基づく演繹を行う。
3: ペンギンは氷雪の上に住み、地上には餌になるものがないため、海に飛び込んで魚などの餌を捕らなければならないが、海の中にはペンギンを捕らえて食べてしまう敵も潜んでいる。
4:ⅰ 英語圏では「最初のペンギン(first penguin)」とは、勇気を持って新しいことにチャレンジする人のことを指す。ⅱ不確実な状況下で勇気を持って決断する人が賞賛される文化があることを示している。
5: 人間が創造性を発揮する際には、未知のものへの好奇心や新しいことにチャレンジする勇気が必要であり、その過程は未来が見えない不確実性の中に飛び込むことに似ている。
6: 「未来感覚」は一瞬先に何が待っているか分からないという、わくわくするような感覚であり、これが創造性を支えるのである。(新しいものを創り出すためには未知の世界にジャンプする勇気と、その結果を受け入れる柔軟性も必要になるのだ。)