【ら む】
百人一首から文法を解説します。作者は藤原兼輔(三十六歌仙の一人)です
みかの原/わきて流るる/泉川/いつ見きとてか/恋しかるらむ
読 み
みかのはら/わきてながるる/いずみがわ/いつみきとてか/こいしかるらむ
文 法
係り結び:いつみきとてか恋しかるらむ
掛詞:「分ける」と「湧ける」、「泉(いずみ)」と「いつみ(見)」
意 味
みかの原から湧き出て流れる泉川のようにいつ見たというのでしょうか。こんなにもあなたが恋しいのでしょうか
この和歌は、中納言兼輔によって詠まれたもので、百人一首の一部でもあります。「まだ見ぬ恋」を歌っていて、恋しい人に会えない切なさを表現しており、平安時代の恋愛を象徴する作品とされています。
泉 川
この掛詞を意識して口語訳するのは大変ですね
「ら む」
恋ひしかる/らむ
恋ひしかる→「恋ひし」の(形容詞 連体形)
※「らむ」は終止形(ラ変型は連体形)に接続←「ウ」段の音に付きます
らむ → らむ(助動詞 現在の原因推量 連体形) 係り結びに注意
現在原因推量は「どうして~だろう(か)」と訳す。(疑問を表す係助詞「や・か」が上に来ることが多い)
助動詞 「らむ」の活用は
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
○ / ○ / らむ / らむ / らめ / ○
もうひとつ、有名な和歌を紹介します
紀友則(きのとものり) の歌です。伊勢物語の23段『筒井筒』や古今和歌集にも載っています
風吹けば /沖つ白波 /たつた山 /夜半にや君が /ひとり越ゆらむ
読 み
かぜふけば/おきつしらなみ/たつたやま/よわにやきみが/ひとりこゆらむ(ん)
文 法
「風吹けば 沖つ白波」が、「たつ」を導く序詞
「たつ」が、波が「立つ」と地名の竜田山の「竜」を掛けた掛詞
「らむ」は現在の原因の助動詞「らむ」の連体形
「立田山(竜田山)」は歌枕として用いられる代表的なもののひとつ
意 味
風が吹くと沖の白波がたつ、その「たつ」と同じ名前がついている竜田山を夜中にあの人は一人で越えているのでしょうか。
ポイント
①〔現在の推量〕今ごろは…しているだろう。▽目の前以外の場所で現在起こっている事態を推量する。
②〔現在の原因の推量〕…(のため)だろう。どうして…だろう。▽目の前の事態からその原因・理由となる事柄を推量する。
③〔現在の伝聞・婉曲(えんきよく)〕…という。…とかいう。…のような。▽多く連体形で用いて、伝聞している現在の事柄を不確かなこととして述べる。
【けむ】
我を待つと/君が濡れけむ/あしひきの/山のしづくに/ならましものを
石川郎女(いしかはのいらつめ)〈万葉・二・一〇八・〉
読 み
あをまつと/きみがぬれけむ(ん)/あしひ(び)きの/やまのしづくに/ならましものを
意 味
わたしを待っていてあなたが濡れたとかいう、(あしひきの)そういう山のしずくになれたらよかったのに。
文 法
「あしひきの」は「山」にかかる枕詞。
「濡れ」→「濡る」の連用形
「ましものを」は、反実仮想の助動詞「まし」に逆接の助詞「ものを」が付いて「…だったらよかったのに」の意味
「けむ」は過去の伝聞の助動詞「けむ」の連体形。※「けむ」は連用形に接続
未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
○ / ○ / けむ / けむ / けめ / ○
ポイント
①〔過去の推量〕…ただろう。…だっただろう。
②〔過去の原因の推量〕…たというわけなのだろう。(…というので)…たのだろう。▽上に疑問を表す語を伴う。
③〔過去の伝聞〕…たとかいう。…たそうだ。
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
29 | 30 |