高等学校における1人1台端末の整備は、文部科学省の「GIGAスクール構想」に基づき、2020年度から2021年度にかけて進められました。私は導入当初から、授業でタブレットをどのように効果的に活用して学習させるかというテーマに取り組み、三年が経過しました。教師の個性が生徒たちを引きつけ、興味関心や知識を与え、それが学力向上につながるという発想から、ICTを活用しメタ認知能力(自分の認知活動を客観的に捉え、評価し、制御する能力)を養うことを重視し、生徒主体の探求的な考察を中心とする授業へとシフトしました。この考え方に基づき、三つの高校でICT活用授業を展開してきました。しかし、その間に様々な問題に直面しましたので、それらを以下に箇条書きにしてみます。
タブレット学習における課題
- 生徒の意識
- 必要性を感じにくい
- 充電が面倒
- ゲームなど学習以外の用途に使ってしまう
- 先生の意識
- テストに間に合わせるため授業を進める必要がある
- ICT機器の使い方を学ぶ時間がない
- 同じ教科担当者同士で連携することで使用
- 文科省の「教えない授業」の意図が伝わらない
- 現場の先生たちに意図が伝わりにくい
- 教えないことに罪悪感を感じる先生がいる
- 生徒が受け身の姿勢で知識を求める
- ICTに関する専門知識を持った教員の不足
- 機能制限がかかったアプリやネット接続のトラブルが解消できない
- ICT支援員との良好な関係が必要
- 授業に必要な教材の不足
- デジタル教材が少ない
- 教科書会社のデジタル教科書には制約が多い
- 学校の予算不足
- ソフト・ハード面で授業に必要なものが購入できない
- マイクロソフトなどの有料コンテンツや生徒のタブレットを教師が一斉にモニターするソフトなど
この三年間、アクティブラーニングとICT活用授業をミックスして、デジタルとアナログを融合させた授業(グループ学習・ペアワーク)を展開してきました。そこで私が実感した、ICT活用授業における「先生と生徒にとって重要なポイント」は次の通りです。
【文部科学省】各教科等の指導におけるICTの活用について
《生徒たちの注意点》
《先生たちの注意点》
《 まとめ 》
- 大事なことは(指導する先生が)途中で諦めず、ICT機器の使用を継続することです。
- ICT学習の前提は生徒が主体的に取り組むことです。(学校時間以外を使って自学自習する意識が重要で、遊びの感覚で使うようにします)
- 主体性を生徒から引き出すために必要なことは「楽しさ」です。(「楽しさ」は「知的な好奇心」を引き出すために必要な要素となります)
- 先生たちに求められる「個性」は教科ごとの「楽しさ」にプラスして、先生たちが持つ魅力を活かし、生徒たちの「知的な好奇心」を引き出す力のことです(=これらが先生たちの「カリスマ性」につながっていきます)
- 知識を教えることは(真の学力向上には)もはや意味を持たなくなります。重要なのは主体的に学習に取り組み、自ら一つ一つ問題点を明らかにし、原因や解決法を探求する生徒たちを育てることです。
高校教育におけるSTEAM教育(STEM+Art)を推進し、各教科を横断的に学ぶことで、実社会(国際社会)での問題解決能力を育成するためにも、今こそICT活用授業が重要であると先生たちも実感しなければならない時代だと思います。